• 2026年5月13日

タバコ・加熱式タバコは男性不妊に影響する?精液検査と妊活への影響を泌尿器科専門医・生殖医療専門医が解説

妊活中の男性で、
「タバコは精子に影響するのか」
「iQOSなどの加熱式タバコなら大丈夫なのか」
「電子タバコやVAPEなら妊活に影響しないのか」
と気になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

タバコは全身の健康に影響するだけでなく、男性の妊孕性にも関係する可能性があります。

特に紙タバコでは、精子の数や動き、形態への悪影響が複数の研究で報告されています。

一方で、iQOSなどの加熱式タバコについては、紙タバコより一部の有害物質が少ない可能性はあるものの、男性妊活に対して安全と言い切れる十分な根拠はまだありません。

この記事では、紙タバコ・加熱式タバコ・電子タバコと男性不妊の関係について、泌尿器科専門医、生殖医療専門医の立場から分かりやすく解説します。

■ タバコは精液所見に影響する?

紙タバコについては、男性の精液所見に悪影響を及ぼす可能性が報告されています。

精液所見とは、

・精液量
・精子濃度
・総精子数
・運動率
・形態

などを評価する検査項目です。

喫煙者では、非喫煙者と比べて精子濃度や運動率、正常形態率が低下する傾向が報告されています。

特に喫煙本数が多い方や、不妊で悩んでいる方では、影響が大きくなる可能性があります。

つまり、紙タバコは男性不妊を考えるうえで、無視できない生活習慣因子です。

■ タバコが精子に影響する理由

タバコの煙には、ニコチン、一酸化炭素、重金属、酸化ストレスを引き起こす物質など、多くの有害成分が含まれています。

これらは、

・精巣の機能
・精子形成
・精子の運動性
・精子DNAの損傷
・ホルモンバランス

などに影響する可能性があります。

特に重要なのが、酸化ストレスです。

精子は酸化ストレスに弱く、酸化ストレスが高い状態では、精子の運動率低下やDNA損傷につながる可能性があります。

通常の精液検査で大きな異常が目立たない場合でも、精子の質に影響していることがあります。

■ 禁煙すると精液所見は改善する?

禁煙によって精液所見が改善する可能性も報告されています。

精子が作られて成熟するには、ある程度の時間がかかります。
そのため、禁煙してすぐに結果が変わるわけではありません。

一般的には、精液所見の変化を見るには数か月単位で考える必要があります。

禁煙によって、

・精液量
・精子濃度
・総精子数

などが改善する可能性があります。

もちろん、禁煙すれば必ず妊娠する、必ず精液所見が正常化する、という意味ではありません。

ただし、男性妊活において、禁煙は取り組む価値のある生活習慣改善の一つです。

■ iQOSなどの加熱式タバコなら大丈夫?

近年、iQOSなどの加熱式タバコを使用している方も増えています。

加熱式タバコは、タバコ葉を燃焼させるのではなく、加熱してエアロゾルを吸入する製品です。

そのため、紙タバコより一部の有害物質が少ないと説明されることがあります。

しかし、ここで大切なのは、加熱式タバコ=安全ではないという点です。

加熱式タバコにもニコチンやその他の有害成分が含まれます。

男性妊活への影響については、紙タバコほど研究が蓄積されていませんが、動物研究などでは精巣機能や酸化ストレスへの影響が示唆されています。

したがって、妊活中の男性に対して、
「紙タバコより害が少ないかもしれないから、加熱式タバコなら安心です」
とは言えません。

■ 加熱式タバコは「紙タバコよりまし」でも「妊活に安全」とは限りません

ここは非常に重要です。

加熱式タバコについては、紙タバコよりも一部の有害物質曝露が少ない可能性があります。

しかし、男性不妊や精液所見への影響については、まだ十分に分かっていない部分があります。

したがって、妊活中の男性に対しては、

紙タバコから加熱式タバコに変えれば大丈夫

ではなく、

妊活を考えるなら、できればニコチン製品そのものを減らす・やめる方向で考える

ことが望ましいと考えます。

■ 電子タバコ・VAPEはどうか

電子タバコやVAPEについても、男性妊活に完全に安全とは言えません。

製品によって含まれる成分が異なり、ニコチンを含むものもあります。

また、加熱された溶媒や香料成分の吸入による影響についても、まだ不明な点があります。

「紙タバコではないから大丈夫」と自己判断するのではなく、妊活中であれば注意して考えた方がよいでしょう。

■ 妊活中に喫煙している場合、まず何をすべきか

妊活中に喫煙している場合、まず大切なのは現在の男性側の状態を確認することです。

具体的には、

・精液検査
・精巣・陰嚢エコー
・ホルモン採血
・精索静脈瘤の評価
・生活習慣や内服薬の確認

などを行うことで、現在の状態を総合的に把握できます。

タバコだけが原因とは限りません。

精索静脈瘤、ホルモン異常、生活習慣、加齢、薬剤など、複数の要因が関係していることもあります。

そのため、精液検査だけで判断するのではなく、エコーや採血も組み合わせて評価することが大切です。

■ このような方はご相談ください

以下のような方は、一度男性側の評価を受けることをおすすめします。

・妊活中で喫煙している
・iQOSなどの加熱式タバコを使用している
・電子タバコやVAPEを使用している
・精液検査を受けたことがない
・精液検査で異常を指摘された
・禁煙した方がよいか迷っている
・一人目はできたが、二人目がなかなかできない
・精索静脈瘤と言われたことがある

喫煙は、男性妊活において見直しやすい生活習慣の一つです。

ただし、禁煙だけで十分かどうかは、現在の精液所見や精巣の状態を確認して判断する必要があります。

■ 当院での対応

当院では、男性不妊に対して、精液検査だけで終わらせるのではなく、

・精液検査
・精巣・陰嚢エコー
・ホルモン採血
・精索静脈瘤の評価
・生活習慣や内服薬の確認

を組み合わせて、男性側の状態を総合的に評価しています。

喫煙や加熱式タバコの使用が気になる方も、現在の状態を確認することで、今後の方針を考えやすくなります。

■ まとめ

紙タバコは、精子の数、運動率、形態などに悪影響を及ぼす可能性が報告されています。

禁煙によって精液所見が改善する可能性もあり、妊活中の男性にとって禁煙は重要な生活習慣改善の一つです。

iQOSなどの加熱式タバコについては、紙タバコより一部の有害物質が少ない可能性はありますが、男性妊活に安全と言い切れる十分な根拠はありません。

電子タバコやVAPEについても、妊活中に安全と断定できるものではありません。

妊活中で喫煙している方、加熱式タバコを使用している方、精液所見が気になる方は、一度男性側の状態を確認することをおすすめします。

流山市・おおたかの森周辺で、タバコや加熱式タバコと男性不妊の関係が気になる方はご相談ください。

参考文献・参考資料

・Sharma R, et al. Cigarette Smoking and Semen Quality: A New Meta-analysis Examining the Effect of the 2010 World Health Organization Laboratory Methods for the Examination of Human Semen. European Urology. 2016.
・Kulaksiz D, et al. Sperm concentration and semen volume increase after smoking cessation in infertile men. International Journal of Impotence Research. 2022.
・Practice Committee of the American Society for Reproductive Medicine. Tobacco or marijuana use and infertility: a committee opinion. Fertility and Sterility. 2024.
・Yoshida S, et al. Effects of Fetal Exposure to Heat-Not-Burn Tobacco on Testicular Function in Male Offspring. Biological and Pharmaceutical Bulletin. 2020.

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