- 2026年5月13日
- 2026年7月28日
体外受精・顕微授精に進む前に男性側も検査すべき理由|泌尿器科専門医・生殖医療専門医が解説
体外受精・顕微授精に進む前に男性側も検査すべき理由
不妊治療を進める中で、体外受精や顕微授精を検討されるご夫婦もいらっしゃいます。
体外受精や顕微授精を勧められたとき、男性側は精液検査だけで終わっていないでしょうか。
その際に、
「顕微授精をするなら、男性側の詳しい検査は必要ないのでは」
「精液検査で精子がいれば十分ではないか」
「女性側の治療を急いだ方がよいのでは」
と考える方もいるかもしれません。
体外受精や顕微授精は、不妊治療において重要な選択肢です。一方で、ART(生殖補助医療)に進む場合でも、男性側の評価を行う意義は大きくあります。
精子数や運動率の低下には、精索静脈瘤、ホルモン異常、射精障害、生活習慣、内服薬など、治療や見直しが可能な原因が隠れていることがあります。
男性側をきちんと確認することで、治療可能な原因が見つかることがあります。また、精子の数だけでなく、精子の質や精巣の状態を確認することで、その後の治療方針を考えやすくなります。
ARTを否定するのではなく、女性側の治療と並行して男性側も評価することで、ご夫婦にとってより適した治療方針を検討できる場合があります。
この記事では、体外受精・顕微授精に進む前に男性側も検査すべき理由について、泌尿器科専門医・生殖医療専門医の立場から解説します。
顕微授精に進めば、男性側の検査は不要なのでしょうか
顕微授精では、1個の精子を選び、直接卵子の中へ注入します。
そのため、精子数が少ない場合や運動率が低い場合でも、妊娠を目指すことができます。
しかし、顕微授精を行うことと、男性不妊の原因を調べることは別の問題です。
精液検査で精子が確認できたとしても、なぜ精子数や運動率が低下しているのか、今後さらに悪化する可能性があるのか、治療できる原因があるのかまでは分からないことがあります。
例えば、男性不妊の原因として比較的多い精索静脈瘤がある場合には、治療によって精液所見の改善が期待できることがあります。
また、ホルモン異常、射精障害、精路の閉塞、内服薬、喫煙、肥満、発熱、睡眠不足などが関係している場合もあります。
顕微授精を行う予定であっても、男性側の状態を把握しておくことには意味があります。
精液検査だけでは分からないことがあります
精液検査では、主に次の項目を確認します。
- 精液量
- 精子濃度
- 総精子数
- 運動率
- 前進運動率
- 精子形態
これらは男性不妊を評価するうえで非常に重要です。
一方で、精液検査だけでは、精巣の状態や精索静脈瘤の有無、ホルモン異常、精路の閉塞などを確認することはできません。
また、精液所見は体調、禁欲期間、発熱、睡眠不足、ストレスなどの影響を受けて変動します。
1回の結果だけで男性側の状態を決めつけるのではなく、必要に応じて再検査を行い、診察や超音波検査、採血結果と合わせて判断することが大切です。
男性不妊の原因として多い精索静脈瘤
精索静脈瘤は、精巣から心臓へ血液を戻す静脈の流れが悪くなり、陰嚢内の静脈が拡張する病気です。
男性不妊の原因として比較的頻度が高く、陰嚢の診察や超音波検査によって評価します。
精索静脈瘤があると、精巣周囲の温度上昇、酸化ストレス、血流のうっ滞などによって、精子数や運動率が低下したり、精子DNAの損傷が増えたりすることがあります。
精索静脈瘤が見つかったからといって、必ず手術が必要になるわけではありません。
精液所見、陰嚢の症状、妊活期間、パートナーの年齢、現在の不妊治療の状況などを踏まえ、経過観察とするか、治療を検討するかを判断します。
一方で、手術の適応がある場合には、顕微鏡下精索静脈瘤低位結紮術によって、精液所見の改善が期待できることがあります。
ホルモン検査で分かること
精子を作る働きには、脳下垂体や精巣から分泌されるホルモンが関係しています。
男性不妊の評価では、必要に応じて次のようなホルモンを測定します。
- FSH
- LH
- テストステロン
- プロラクチン
FSHやLHの値は、精巣が精子を作る働きや、脳下垂体からの刺激の状態を評価する手がかりになります。
テストステロンは男性ホルモンの状態を確認する検査です。
プロラクチンが高い場合には、性機能やホルモン分泌に影響することがあります。
精液検査だけでなくホルモン検査を組み合わせることで、男性不妊の原因をより詳しく評価できます。
精子の数だけでなく「質」が関係することもあります
一般的な精液検査では、精子数や運動率などを確認します。
しかし、精液検査の数値が大きく低下していなくても、なかなか妊娠に至らない場合があります。
そのような場合には、精子DNAの損傷や酸化ストレスが関係している可能性があります。
当院では、必要に応じて次の検査を行っています。
DFI検査
DFIは、精子DNAの損傷の程度を評価する検査です。
精子DNAの損傷が多い場合には、受精、胚発育、流産などとの関連が指摘されています。
ORP検査
ORPは、精液中の酸化ストレスの状態を評価する検査です。
酸化ストレスが強いと、精子運動率の低下や精子DNA損傷につながる可能性があります。
DFI・ORP検査は、すべての方に必ず必要な検査ではありません。
精液検査の結果、妊活期間、精索静脈瘤の有無、不妊治療の経過などを踏まえて検討します。
男性側を評価することで治療方針が変わることがあります
男性側に治療可能な原因が見つかった場合には、その原因に対する対応を行います。
例えば、
- 生活習慣や内服薬の見直し
- 禁煙
- 体重管理
- 睡眠や運動習慣の改善
- ホルモン異常に対する治療
- 射精障害に対する治療
- 精索静脈瘤に対する手術
などを検討します。
男性側の治療によって、自然妊娠や人工授精を目指せるようになる場合があります。
また、体外受精や顕微授精を継続する場合でも、より良い精子を得ることを目的として男性側の治療を行うことがあります。
ただし、男性側の治療効果が現れるまでには時間がかかることがあります。
精子が作られて成熟するまでには約3か月を要するため、女性の年齢や卵巣予備能などを考慮し、女性側の治療を止めることなく並行して進めることが重要です。
ARTを否定するのではなく、並行して男性側を調べます
男性側の検査を行うことは、体外受精や顕微授精を否定することではありません。
女性の年齢や卵巣予備能、不妊期間などによっては、ARTを速やかに進めることが適切な場合があります。
そのような場合でも、女性側の治療と並行して男性側を評価できます。
男性側に精索静脈瘤やホルモン異常などが見つかった場合には、ARTを進めながら男性側の治療を検討することも可能です。
ご夫婦の治療状況を踏まえ、時間を無駄にしない形で男性側の評価を進めることが大切です。
このような方は男性側の詳しい評価をご検討ください
次のような方は、精液検査だけでなく、男性不妊を専門とする医師による詳しい評価をご検討ください。
- 女性側の検査や治療だけが先に進んでいる
- 精液検査を1回受けただけで顕微授精を勧められた
- 精子数や運動率の低下を指摘された
- 無精子症や高度乏精子症を指摘された
- 精索静脈瘤について診察を受けたことがない
- 陰嚢の血管の膨らみや違和感がある
- 精液検査が正常でも妊娠に至らない
- 流産を繰り返している
- 体外受精や顕微授精に進む前に、男性側でできることを確認したい
- ARTを続けながら男性側の治療も検討したい
男性不妊外来ではどのような検査を行いますか
男性不妊外来では、いきなり手術や治療を勧めることはありません。
まず問診、精液検査、診察、陰嚢超音波検査、必要な採血などを行い、男性不妊の原因を整理します。
問診
妊活期間、これまでの精液検査、不妊治療の経過、既往歴、手術歴、内服薬、喫煙、発熱歴、性機能などを確認します。
精液検査
精子濃度、総精子数、運動率、前進運動率などを評価します。
精液所見は変動するため、必要に応じて複数回の検査を行います。
陰嚢の診察・超音波検査
精巣の大きさや硬さ、精索静脈瘤の有無、精巣内部の状態などを確認します。
陰嚢超音波検査による強い痛みは通常なく、診察室で行うことができます。
ホルモン検査
FSH、LH、テストステロン、プロラクチンなどを測定し、精子を作る働きや男性ホルモンの状態を評価します。
必要に応じた追加検査
精液検査や診察結果に応じて、DFI・ORP検査、染色体検査、AZF欠失検査などを検討する場合があります。
すべての方に同じ検査を行うのではなく、一人ひとりの状態に応じて必要な検査をご提案します。
検査で異常が見つかったら、必ず手術になりますか
精索静脈瘤や精液所見の異常が見つかっても、必ず手術が必要になるわけではありません。
治療方針は、
- 精液検査の結果
- 精索静脈瘤の程度
- 陰嚢の症状
- 妊活期間
- パートナーの年齢
- 女性側の検査結果
- 現在の不妊治療の段階
などを踏まえて検討します。
経過観察を選択する場合もあれば、生活習慣の見直し、薬物療法、精索静脈瘤手術を検討する場合もあります。
当院では、検査結果だけで機械的に治療を決めるのではなく、ご夫婦の状況を踏まえて今必要な対応をご提案します。
当院での男性不妊評価
当院では、泌尿器科専門医・生殖医療専門医が、精液検査、陰嚢の診察・超音波検査、ホルモン検査、必要に応じたDFI・ORP検査を組み合わせて、男性側を総合的に評価します。
検査結果をお伝えして終わりではありません。
生活習慣や内服薬の見直し、薬物療法、精索静脈瘤の日帰り手術、生殖医療施設との連携まで、一人ひとりの状態とご夫婦の治療状況に応じた方針をご提案します。
女性側の治療を止める必要はありません。
生殖医療施設での治療と並行しながら、男性側で確認すべきことや、治療できる原因がないかを評価します。
つくばエクスプレス沿線・東葛地域から受診いただけます
当院は、流山おおたかの森駅から徒歩5分です。
つくばエクスプレス沿線の北千住、南千住、八潮、三郷中央、柏の葉キャンパス、守谷、つくば方面から受診していただけます。
また、柏市、我孫子市、鎌ケ谷市、松戸市、野田市など、東葛地域からもご来院いただいています。
男性不妊の相談先をお探しの方、精液検査だけでなく原因まで詳しく調べたい方はご相談ください。
まとめ
体外受精や顕微授精は、不妊治療において重要な選択肢です。
一方で、ARTに進む場合でも、男性側の検査が不要になるわけではありません。
精液検査だけでは、精索静脈瘤、ホルモン異常、精路の問題、精子DNA損傷などを十分に評価できないことがあります。
男性側に治療可能な原因が見つかれば、精液所見の改善や、その後の治療方針の見直しにつながる可能性があります。
女性側の治療を止める必要はなく、男性側の評価は並行して進めることができます。
「男性側は精液検査しか受けていない」
「顕微授精に進む前に男性側でできることを確認したい」
「精索静脈瘤がないか調べたい」
という方は、男性不妊外来へご相談ください。