- 2026年6月4日
精索静脈瘤で痛みが出ることはある?陰嚢の重だるさ・違和感と手術の考え方を泌尿器科専門医・生殖医療専門医が解説
「左側の陰嚢が重だるい」
「長時間立っていると痛くなる」
「運動後に陰嚢の違和感が強くなる」
「夕方になると精巣のまわりが痛い」
「精索静脈瘤と言われたが、痛みと関係があるのか知りたい」
このような症状で受診される方がいます。
精索静脈瘤は、男性不妊の原因として知られています。
しかし、精索静脈瘤は不妊だけでなく、陰嚢や精巣周囲の痛み、重だるさ、違和感の原因になることがあります。
この記事では、有痛性精索静脈瘤の症状、診断、ほかの病気との見分け方、手術を検討するタイミングについて、泌尿器科専門医・生殖医療専門医の立場から分かりやすく解説します。
精索静脈瘤とは
精索静脈瘤とは、精巣から心臓へ戻る静脈の流れが悪くなり、陰嚢内の静脈が拡張している状態です。
足にできる下肢静脈瘤と似たように、血液がうっ滞し、静脈がふくらんで見えたり触れたりします。
精索静脈瘤は左側に多くみられます。
左側に多い理由には、左精巣静脈の走行や血液の戻り方の特徴が関係しています。
精索静脈瘤があると、精巣周囲の温度上昇や酸化ストレスなどにより、精子の数、運動率、精子の質に影響することがあります。
そのため、男性不妊の評価では非常に重要な疾患です。
精索静脈瘤で痛みが出ることはあります
精索静脈瘤は無症状のことも多いですが、痛みや違和感を伴うことがあります。
痛みの特徴としては、
・鈍い痛み
・重だるさ
・引っ張られるような違和感
・陰嚢の不快感
・立っていると悪化する
・運動後に悪化する
・夕方に強くなる
・横になると軽くなる
といったものがあります。
鋭い激痛というよりは、重い、だるい、張る、引っ張られる、と表現されることが多いです。
特に左側の陰嚢や精巣周囲に症状が出ることが多くあります。
なぜ痛みが出るのか
精索静脈瘤で痛みが出る理由は、完全には一つに決まっているわけではありません。
考えられる要因としては、
・静脈内の血液うっ滞
・静脈圧の上昇
・精索周囲の牽引感
・精巣周囲の温度上昇
・炎症や酸化ストレス
・長時間立位による血流変化
などがあります。
静脈瘤は、立っていると血液がたまりやすくなります。
そのため、長時間立っている時、運動後、夕方などに症状が強くなり、横になると楽になることがあります。
痛みがあれば必ず精索静脈瘤が原因とは限りません
ここが非常に重要です。
精索静脈瘤があり、陰嚢の痛みがある場合でも、痛みの原因が本当に精索静脈瘤かどうかは慎重に判断する必要があります。
陰嚢や精巣の痛みには、ほかにもさまざまな原因があります。
代表的なものには、
・精巣上体炎
・精巣炎
・精巣捻転
・精巣腫瘍
・陰嚢水腫
・精液瘤
・精索水腫
・鼠径ヘルニア
・尿路結石からの関連痛
・前立腺炎
・慢性骨盤痛症候群
・腰椎疾患や神経痛
・筋肉や鼠径部の痛み
などがあります。
特に、急に強い痛みが出た場合には、精巣捻転など緊急性の高い病気を考える必要があります。
また、硬いしこりを触れる場合や、精巣そのものが大きくなっている場合には、精巣腫瘍の確認も必要です。
「精索静脈瘤があるから痛みの原因もそれだろう」と決めつけないことが大切です。
早めに受診すべき痛み
以下のような場合には、早めに泌尿器科を受診してください。
・急に強い精巣痛が出た
・陰嚢が急に腫れてきた
・発熱がある
・吐き気を伴う
・精巣が上がっている感じがする
・精巣に硬いしこりを触れる
・痛みがどんどん強くなる
・歩けないほど痛い
・子どもや若年男性の急な精巣痛
これらは精索静脈瘤以外の病気の可能性があります。
急性陰嚢症では、早急な診断が必要です。
泌尿器科では何を確認する?
精索静脈瘤による痛みが疑われる場合、泌尿器科では問診、診察、超音波検査などを行います。
問診
まず、痛みの性質を確認します。
・いつから痛いか
・左右どちらか
・鋭い痛みか、鈍い痛みか
・立っていると悪化するか
・運動後に悪化するか
・横になると楽になるか
・発熱はあるか
・排尿症状はあるか
・しこりを触れるか
・妊活中か
・精液検査を受けたことがあるか
などを確認します。
痛みの性質は、原因を考えるうえで重要です。
診察
精索静脈瘤は、立った状態で分かりやすくなることがあります。
診察では、陰嚢の左右差、静脈のふくらみ、精巣の大きさ、しこり、圧痛などを確認します。
精索静脈瘤は「ミミズが入っているような血管のふくらみ」と表現されることがあります。
ただし、自己判断では分かりにくいことも多く、診察と超音波検査を組み合わせることが大切です。
陰嚢・精巣超音波検査
超音波検査では、
・精索静脈瘤の有無
・静脈の拡張
・血流の逆流
・精巣の大きさ
・精巣腫瘍の有無
・精巣上体炎の有無
・陰嚢水腫
・精液瘤
・精索水腫
などを確認します。
痛みがある場合には、精索静脈瘤だけでなく、ほかの陰嚢内疾患がないか確認することが重要です。
精液検査
精索静脈瘤は男性不妊と関係することがあります。
そのため、妊活中の方や将来妊娠を希望する方では、精液検査も重要です。
精液検査では、
・精液量
・精子濃度
・総精子数
・運動率
・形態
などを確認します。
痛みで受診した場合でも、精索静脈瘤がある場合には、男性不妊の観点から精液検査を検討することがあります。
まずは保存的治療を行うことがあります
精索静脈瘤による痛みが疑われる場合でも、すぐに手術を行うとは限りません。
痛みが軽い場合や発症して間もない場合には、まず保存的治療を行うことがあります。
保存的治療には、
・安静
・痛み止め
・陰嚢を支える下着の使用
・長時間の立位を避ける
・激しい運動を一時的に控える
・炎症や感染があればその治療
などがあります。
保存的治療で症状が改善する場合もあります。
一方で、痛みが続く場合、生活に支障がある場合、精索静脈瘤が明らかで痛みの原因と考えられる場合には、手術を検討します。
手術を検討するタイミング
有痛性精索静脈瘤で手術を検討するのは、一般的には以下のような場合です。
・触診で分かる精索静脈瘤がある
・痛みや重だるさが続いている
・保存的治療で改善しない
・日常生活や運動に支障がある
・ほかの原因が否定的である
・妊活中で精液所見にも異常がある
・将来的な妊孕性も気になる
重要なのは、痛みの原因が本当に精索静脈瘤と考えられるかどうかです。
痛みの原因が別にある場合、精索静脈瘤手術をしても痛みが改善しない可能性があります。
そのため、手術前には診察と超音波検査で状態を確認し、ほかの病気がないか評価します。
手術で痛みはよくなる?
有痛性精索静脈瘤に対する手術では、多くの方で痛みの改善が期待できます。
特に、鈍い痛み、重だるさ、立位や運動で悪化する痛みなど、精索静脈瘤らしい症状がある場合には改善しやすいとされています。
一方で、すべての方で痛みが完全になくなるわけではありません。
手術後も痛みが残ることがあります。
痛みが残る原因としては、
・痛みの原因が精索静脈瘤ではなかった
・慢性痛として神経が関係している
・前立腺炎や骨盤痛が関係している
・鼠径部や腰椎由来の痛みがある
・再発や残存静脈がある
などが考えられます。
そのため、手術の前には「痛みが必ず消える」と考えるのではなく、改善が期待できる症状かどうかを慎重に判断することが大切です。
精索静脈瘤手術とは
精索静脈瘤手術では、逆流している静脈を処理し、血液のうっ滞を改善することを目指します。
手術方法にはいくつかありますが、顕微鏡下または拡大視野で行う低位結紮術は、精巣動脈やリンパ管を温存しながら静脈を処理する方法です。
精索静脈瘤手術の目的は、
・痛みや重だるさの改善
・精巣環境の改善
・精液所見の改善を期待する
・男性不妊治療の一環として行う
などです。
痛みを主目的に手術する場合でも、妊活中であれば精液所見もあわせて確認します。
当院での対応
当院では、精索静脈瘤、陰嚢痛、精巣の違和感、男性不妊について、泌尿器科専門医・生殖医療専門医が診療しています。
有痛性精索静脈瘤が疑われる場合には、
・問診
・診察
・陰嚢・精巣超音波検査
・精液検査
・必要に応じたホルモン採血
などを組み合わせて評価します。
精索静脈瘤が痛みや男性不妊に関係していると考えられる場合には、日帰り手術も含めて治療方針をご提案します。
流山おおたかの森周辺だけでなく、柏市、松戸市、野田市、三郷市、八潮市、守谷市、つくば市、つくばエクスプレス沿線、東武アーバンパークライン沿線からのご相談も可能です。
このような方はご相談ください
以下のような方は、一度ご相談ください。
・陰嚢が重だるい
・左側の精巣まわりが痛い
・立っていると痛みが強くなる
・運動後に陰嚢の違和感がある
・精索静脈瘤を指摘された
・痛み止めで一時的に良くなるが繰り返す
・妊活中で精索静脈瘤が気になる
・精液検査で異常を指摘された
・手術が必要か知りたい
・痛みの原因が精索静脈瘤か確認したい
まとめ
精索静脈瘤は、男性不妊だけでなく、陰嚢の重だるさ、精巣周囲の違和感、鈍い痛みの原因になることがあります。
長時間立っている時や運動後、夕方に悪化し、横になると楽になるような痛みでは、精索静脈瘤が関係していることがあります。
ただし、陰嚢や精巣の痛みには、精巣上体炎、精巣捻転、精巣腫瘍、尿路結石、前立腺炎など、ほかの原因もあります。
自己判断せず、泌尿器科で診察と超音波検査を受けることが大切です。
保存的治療で改善しない有痛性精索静脈瘤では、手術が選択肢になることがあります。
流山おおたかの森周辺で、精索静脈瘤による痛み、陰嚢の重だるさ、男性不妊についてお悩みの方はご相談ください。
解説
安東 聡
リプロケアクリニックおおたかの森 院長
泌尿器科専門医・生殖医療専門医