• 2026年6月4日

精索静脈瘤手術で不妊治療をステップダウンできる可能性|泌尿器科専門医・生殖医療専門医が解説

不妊治療を受けているご夫婦の中には、

「体外受精や顕微授精を勧められている」
「人工授精を続けているが、なかなか結果が出ない」
「精液検査の結果が悪いと言われた」
「精索静脈瘤があると言われたが、手術する意味があるのか分からない」
「男性側を治療することで、不妊治療の選択肢は変わるのか知りたい」

と悩んでいる方もいらっしゃると思います。

精索静脈瘤は、男性不妊の原因として重要な疾患です。

精索静脈瘤が精液所見に影響している場合、手術によって精子の数や運動率、精子の質が改善する可能性があります。

その結果、体外受精や顕微授精を予定していた方が人工授精を検討できるようになったり、人工授精を予定していた方がタイミング法を検討できるようになったりする可能性があります。

これを、この記事では分かりやすく「不妊治療のステップダウン」と表現します。

ただし、精索静脈瘤手術を受ければ必ず自然妊娠できる、必ず人工授精に戻れる、というわけではありません。

大切なのは、男性側の状態を正しく評価し、女性側の年齢や卵巣機能、妊活期間、不妊治療の状況も含めて、夫婦全体で治療方針を考えることです。

不妊治療のステップアップとは

不妊治療では、一般的に治療段階を上げていくことがあります。

たとえば、

・タイミング法
・人工授精
・体外受精
・顕微授精

というように、より高度な治療へ進むことを「ステップアップ」と表現することがあります。

もちろん、女性側の年齢や卵管、卵巣機能、精液所見、治療歴によって、最初から体外受精や顕微授精が適している場合もあります。

一方で、男性側に治療可能な原因があるにもかかわらず、そこを十分に評価しないまま高度生殖医療へ進んでいるケースもあります。

その代表的な原因の一つが、精索静脈瘤です。

精索静脈瘤とは

精索静脈瘤とは、精巣から心臓へ戻る静脈の流れが悪くなり、陰嚢内の静脈が拡張している状態です。

血液がうっ滞することで、

・精巣周囲の温度上昇
・酸化ストレスの増加
・精巣機能への影響
・精子形成への影響

などが起こる可能性があります。

精索静脈瘤は男性不妊の原因として重要で、精子の数、運動率、形態、DNA損傷などに関係することがあります。

自覚症状がないことも多く、精液検査や陰嚢エコーで初めて見つかることもあります。

精索静脈瘤手術で何が期待できるのか

精索静脈瘤手術の目的は、逆流している静脈を処理し、精巣周囲の環境を改善することです。

手術により期待されることには、

・精子濃度の改善
・総精子数の改善
・運動率の改善
・総運動精子数の改善
・精子の質の改善
・酸化ストレスの低下
・自然妊娠率の改善可能性
・人工授精や体外受精における選択肢の変化

などがあります。

ただし、改善の程度には個人差があります。

手術をすれば必ず精液所見が正常になるわけではありません。

年齢、精索静脈瘤の程度、術前の精液所見、精巣の大きさ、ホルモン値、女性側の状況などによって、期待できる効果は変わります。

「ステップダウン」とはどういう意味か

不妊治療におけるステップダウンとは、男性側の状態が改善することで、より低侵襲な治療や、より自然に近い方法を検討できるようになる可能性を指します。

たとえば、

・顕微授精を予定していたが、体外受精も検討できる可能性
・体外受精を予定していたが、人工授精も検討できる可能性
・人工授精を予定していたが、タイミング法も検討できる可能性
・採精時の精子数や運動精子数が増え、ARTの選択肢が広がる可能性

などです。

これは「必ず治療段階を下げられる」という意味ではありません。

しかし、精索静脈瘤が原因で精液所見が悪くなっている場合、男性側を治療することで、夫婦の不妊治療の選択肢が広がる可能性があります。

顕微授精を勧められた男性も、男性側評価は重要です

精液検査の結果が悪いと、婦人科や不妊治療施設で顕微授精を勧められることがあります。

顕微授精は非常に重要な治療法です。

しかし、顕微授精に進む場合でも、男性側の原因を確認する意味はあります。

なぜなら、

・精索静脈瘤が隠れていることがある
・ホルモン異常が関係していることがある
・薬剤や生活習慣が影響していることがある
・精液所見が改善すれば治療選択肢が変わることがある
・将来の採精や治療計画に影響することがある

からです。

「顕微授精をすればよいから男性側は調べなくてよい」という考え方では、治療可能な男性側要因を見逃してしまうことがあります。

精索静脈瘤手術が向いている可能性がある方

精索静脈瘤手術を検討するかどうかは、総合的に判断します。

一般的には、以下のような方で検討します。

・妊娠を希望している
・触診で分かる精索静脈瘤がある
・精液検査で異常がある
・精索静脈瘤以外に明らかな原因が乏しい
・女性側の状況を踏まえて、男性側治療の時間的余裕がある
・精液所見改善により治療選択肢が広がる可能性がある
・有痛性精索静脈瘤がある
・将来的な妊孕性を考えている

一方で、画像検査だけで見つかる、触診では分からない精索静脈瘤では、手術適応は慎重に考える必要があります。

また、女性側の年齢や卵巣予備能によっては、精索静脈瘤手術を待つよりも、ARTを優先すべき場合もあります。

手術後、いつ精液所見を確認するのか

精子が作られるには時間がかかります。

そのため、精索静脈瘤手術を受けても、すぐに精液所見が変わるわけではありません。

一般的には、手術後3か月以降に精液検査を行い、変化を確認します。

改善がみられる場合、3か月、6か月、場合によってはそれ以降にかけて変化していくことがあります。

不妊治療の方針を考える際には、女性側の治療スケジュールとあわせて、手術後の評価時期を考えることが大切です。

女性側の年齢・治療状況も重要です

精索静脈瘤手術を検討する際には、男性側だけで判断することはできません。

女性側の年齢、卵巣予備能、卵管の状態、排卵状況、治療歴、不妊期間などを含めて考える必要があります。

たとえば、女性側の年齢が高い場合や、早急にARTを進める必要がある場合には、精索静脈瘤手術を待つよりも、ARTを優先する方がよいことがあります。

一方で、女性側に大きな問題がなく、男性側の精索静脈瘤が明らかで、精液所見に異常がある場合には、精索静脈瘤手術によって治療選択肢が広がる可能性があります。

大切なのは、夫婦全体で最適な治療計画を考えることです。

手術しても必ず自然妊娠するわけではありません

精索静脈瘤手術は、男性側の治療として有効な可能性があります。

しかし、手術をすれば必ず自然妊娠できるわけではありません。

また、必ず人工授精やタイミング法に戻れるわけでもありません。

精索静脈瘤手術は、

・精液所見を改善する可能性がある
・男性側の治療可能な原因に介入する
・不妊治療の選択肢を広げる可能性がある

という位置づけです。

過度に期待しすぎるのではなく、精液検査、陰嚢エコー、ホルモン採血、女性側の状況を踏まえて、現実的な見通しを持つことが大切です。

当院での男性不妊・精索静脈瘤評価

当院では、男性不妊や精索静脈瘤に対して、精液検査だけでなく、男性側を総合的に評価します。

具体的には、

・精液検査
・精巣・陰嚢エコー
・精索静脈瘤の評価
・ホルモン採血
・生活習慣や内服薬の確認
・EDや射精障害の相談
・女性側の治療状況を踏まえた相談

などを行います。

精索静脈瘤が男性不妊に関係していると考えられる場合には、日帰り手術を含めて治療方針をご提案します。

また、手術後は精液検査で変化を確認し、必要に応じて婦人科・不妊治療施設とも連携しながら治療方針を考えます。

このような方はご相談ください

以下のような方は、一度ご相談ください。

・精索静脈瘤を指摘された
・精液検査で異常を指摘された
・顕微授精を勧められている
・体外受精に進む前に男性側を確認したい
・人工授精を続けているが結果が出ない
・二人目不妊で悩んでいる
・男性側にできる治療があるか知りたい
・精索静脈瘤手術で精液所見が改善するか知りたい
・不妊治療をステップダウンできる可能性があるか知りたい
・婦人科通院中だが男性側の評価がまだ十分でない

まとめ

精索静脈瘤は、男性不妊の原因として重要な疾患です。

精索静脈瘤が精液所見に影響している場合、手術によって精子の数、運動率、精子の質が改善し、不妊治療の選択肢が広がる可能性があります。

その結果、体外受精や顕微授精だけでなく、人工授精やタイミング法を検討できる可能性が出てくる場合もあります。

ただし、精索静脈瘤手術をすれば必ず自然妊娠できる、必ずステップダウンできるというわけではありません。

大切なのは、男性側の原因を正しく評価し、女性側の状況も含めて、夫婦全体で治療方針を考えることです。

流山おおたかの森周辺で、精索静脈瘤、男性不妊、精液検査、不妊治療のステップダウンについて相談したい方はご相談ください。


解説

安東 聡
リプロケアクリニックおおたかの森 院長
泌尿器科専門医・生殖医療専門医

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